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編曲・演奏の際にはご注意を!著作権まとめ2019

昨今話題に上がることの多い著作権。東京オリンピックのエンブレムが発表された時にも、大きな問題になりましたよね。

音楽家にとっても著作権はとても身近で、編曲や録音、コンサートで演奏する際にも、著作権保護下にある作品については注意が必要です。

また、私は編曲も生業としておりますが、演奏許諾は比較的取りやすくても、編曲許諾は全然下りないとか、許諾は下りるけど何万もかかるとか、作曲者や海外現地の管理者に直接許諾がもらえたらOK…の曲なので連絡を取るも返事がないとか(これ、割とあります)、結構大変。

そんな音楽家にとって知っておかないとマズイ著作権ですが、20181230成立施行されたTPP11により、大きく変更が加えられました。

ここではその変更点や、気をつけないといけないポイントをまとめておきましたので、参考にしていただければと思います。

著作権とは?

著作権は、知的財産権の一種であり、美術、音楽、文芸、学術など作者の思想や感情が表現された著作物を対象とした権利である。

生み出された著作物に対してその作者の権利を法律で定めているもので、音楽の領域では作詞・作曲された著作物そのものはもちろん、演奏されたもの(演奏そのものや、録音したものにも)に対しても権利が発生します。また著作権は、日本の著作権法では原則として、創作した時点で自動的に創作者(著作者)に帰属します。

日本においては一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が音楽著作権の集中管理事業を営んでおり、JASRACのサイトでは著作権の有無や、許諾申請先を調べたりできます。

変更点・注意点まとめ

著作権保護期間が50年→70年に延長

これまでは50年だった日本での著作権の保護期間が、原則として著作者の死後(無名・変名・団体名義の場合は公表後)70年に延長されました。これにより、1968年以降に亡くなった方の著作物の保護期間が延長されます。

翌年の1月1日から計算するので注意!

著作権保護期間は「死亡公表創作した日から」ではなく、「死亡・公表・創作した日の、翌年の11日から」起算します。例えば201811日〜1231日の間に亡くなった方201911日から70年後の208911日よりパブリックドメインとなります

戦時加算は撤廃されず…

サンフランシスコ平和条約に基づき連合国(アメリカやイギリス、フランスなど)及び連合国国民が、第二次世界大戦前または戦中に取得した著作権は、追加の保護期間を与えられています。

これは「戦時加算」と呼ばれ、該当作品に対しては通常の保護期間に加え、1941128日(開戦〜各国とのサンフランシスコ平和条約発効の前日までの日数戦中に取得した著作権は取得日平和条約発効前日までが加算されます。例えばアメリカなら3794で、約10年の加算となっています。

この戦時加算、保護期間が延長される代わりに撤廃されるのでは?という噂もありましたが、現時点(2019年8月)では継続中です。

保護期間は作品ごとに異なるので注意!

注意したいのは、戦時加算により、同じ著作者であっても作品ごとに保護期間が異なるいう点です。

例えばプーランクの作品は「シンフォニエッタ(1947)」や「ピアノ協奏曲 嬰ハ短調(1949)」は既にパブリックドメインとなっていますが、戦前・戦中の作品(例えば「牝鹿(1923)」「小象ババールの物語(1940-45)」など)は戦時加算により著作権保護下にあります。

この辺りがちょっとややこしいので、第二次世界大戦時にご存命だった作曲家の場合は必ず、作品ごとの著作権の有無を、JASRACのホームページで検索するようにしましょう。

戦時加算中だった作品も保護期間が延長

保護期間が延長するのは「20181229時点で著作権が消滅していない作品」ですので、戦時加算期間中の著作物についても、保護期間50年から70年に延長されます。

著作権が既に消滅してるものは対象外

一度切れた著作権を復活させるという措置は採らないという原則があるため20181229日時点でパブリックドメインとなっている作品については、遡って保護期間が延長されることはありません

外国の著作物も保護期間は70年

国により著作権保護期間は異なるので、外国の著作物はどうなるの?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、原則として「保護義務を負う外国人の著作物の保護期間は、我が国の著作権法の仕組みによること」とされています。つまり著作権保護期間が100年の国の著作物であっても、我が国における保護期間は70年

ただし我が国より保護期間が短い国の著作物はその相手国の保護期間だけ保護されます(例えば保護期間50の国の著作物であれば我が国でも50年間保護)。

著作権は保護しながら、広めていこう

ちょっとややこしい&変更された著作権、ご理解いただけましたでしょうか?これを参考に作品を守っていただき、さらに著作権が切れた作品については大いに世に広めていただければと思います。

個人的には、きちんと著作権が保護されていくのは嬉しい反面、保護によって名曲が人の耳に触れる機会が減ることがあれば寂しいなと思います。

保護期間の延長により今後20年間、新たに保護期間が満了する作品が生まれないことになりますが、作曲者ご本人が編曲許諾を出してくださったり、編曲料をお支払いすれば編曲OKの場合も多いです。

また、演奏については(条件次第で)数百円お支払いするだけで隠れた名曲を演奏することもできますので、ぜひ保護期間中の作品もたくさん世に広めていただければと思います!