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本屋大賞、いよいよ明後日発表!

今年もやってきました!本屋大賞の発表。2004年から続き、今年で16回目を迎える本屋大賞ですが、ノミネート10作品の中からいよいよ明後日、「大賞」が発表されます。

本屋大賞とは

「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。 また「本屋大賞」は発掘部門も設けます。この「発掘部門」は既刊本市場の活性化を狙ったもので、過去に出版された本のなかで、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと書店員が思った本を選びます。

過去の大賞には、某国際ピアノコンクールを舞台にした恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」や、調律師の青年の生き様を描いた宮下奈都さんの「羊と鋼の森」も選ばれ、また大賞ではなかったものの、ヴィヴァルディと彼を取り巻く女性を描いた「ピエタ」、”シューマン愛”満載なミステリー「シューマンの指」など、ピアニストにとって縁の深い作品もノミネートされています。

今年度の本屋大賞は、2017年12月1日〜2018年11月30日の間に刊行された日本の小説を対象としており、ここから店員の投票だけで大賞が選ばれるのですが、今年のノミネート10作品がこちら。

  • 愛なき世界(三浦しをん)
  • ある男(平野啓一郎)
  • さざなみのよる(木皿泉)
  • そして、バトンは渡された(瀬尾まいこ)
  • 熱帯(森見登美彦)
  • ひと(小野寺史宜)
  • ひとつむぎの手(知念実希人)
  • 火のないところに煙は(芹沢央)
  • フーガはユーガ(伊坂幸太郎)
  • ベルリンは晴れているか(深緑野分)

残念ながら今年は音楽に関係する作品はありませんが…

血のつながらない5人の父母にまるでリレーされるように育てられた女子高生のお話「そして、バトンは渡された」や、結婚した男性が実は全くの別人だった…という「ある男」、まるで実話のように展開されるホラー「火のないところに煙は」など、なかなかの名作ぞろいです。

その中で、私が個人的に好きなのはこちらの作品。

三浦しをん「愛なき世界」の魅力

実は今日、本好きの仲間と10作品を紹介し合う「本屋大賞読書会」なるものに参加して、「愛なき世界」の魅力をお伝えしてきました。そんな「愛なき世界」の内容を簡単にまとめると…

洋食屋”円服亭”の見習い藤丸くんが、T大大学院生の本村さんに恋をするが、当の本村さんは結婚にも恋愛にも興味がなく、シロイヌナズナの研究に没頭する”植物オタク”。恋のライバルは、まさかの「草」だった!藤丸くんの恋の行方やいかに!?

という感じなのですが、面白いのはユニークなキャラクター像なんです。伊坂幸太郎さんや綾辻行人さんなんかは、話の筋にクローズアップするために(あくまで私個人の分析)、各キャラクターの描写がそれほど詳細でないような印象を受けますが、それとは正反対ですね。

登場人物がユニーク!

まずメインキャラクターのお二人からご紹介しましょう。

  • 藤丸陽太…円服亭の見習い。好きな女の子を想ってケーキだって焼いちゃう料理男子。デリバリーサービスの一環としてT大の松田研究室に通い、研究室の面々と交流を深めていく。本村さんが好き。たまに天然で「いいこと」を言って、本村を救うことも。
  • 本村紗英…T大の大学院生。松田研究室で植物学の研究をする。「気孔」をプリントしたTシャツを着るなどちょっと変わったセンスを持つ。三度の飯より植物が好きでシロイヌナズナの研究に没頭しているが、その愛情に反して植物を枯らしてしまう。

この二人の恋模様(というか愛情の方向は「藤丸→本村→シロイヌナズナ」なんですけどね 笑)を中心に話が展開するのですが、二人以外にも、

  • 松田賢三郎…T大大学院理学系研究科生物科学専攻の教授。その見た目から藤丸に「殺し屋」と評され、本人も陰鬱さを気にしてはいるが、その解決策としてアロハシャツを着るなどちょっとズレている。でも実は学部生からは影の人気を誇っている。
  • 加藤…サボテンをこよなく愛する大学院生。本村とは正反対にどんな植物も生い茂らせる「緑の指」の持ち主。あまりの繁殖力に諸岡教授の怒り(?)を買い、研究室の面々+藤丸でサツマイモの収穫を行うハメに。
  • 岩間…ポスドク。研究室唯一の彼氏持ち。
  • 諸岡…イモが大好きで藤丸から「おイモの教授」と呼ばれる。茎の研究を行っている。
  • 円谷…円服亭の店主。彼女で花屋の”はなちゃん”と付き合っている。

など、個性的で魅力的なキャラクターばかりです(私は緑の指の加藤くんがお気に入りですが、松田教授や諸岡教授も捨てがたい!)。

植物研究者たちのマニアックな世界を垣間見れる!

個性的なキャラクター達とともにこの作品の醍醐味となっているのは、少々マニアックな「植物学」の研究者たちの世界です。

本村さんは植物のモデル生物である「シロイヌナズナ」の研究しているのですが、そのシロイヌナズナの”四重変異体”を作ろうとしています。

「葉がギザギザになる」「茎が赤くなる」など、遺伝子のエラーによって変異した株を四種類掛け合わせることにより、四つの変異特性すべてをもった株が”四重変異体”です。本村さんは葉の大きさを制御するのに関係する変異体などを掛け合わせて四重変異体を作るべく交配を重ねていたのですが、ようやくお目当ての四重変異体が見つかったと思いきや、初歩的なミスで研究が台無しになるかも!?というヒヤヒヤするシーンも。

音楽家にとっても身近かも!?

人間とは違い、愛のない世界で生殖を営む植物。それが「愛なき世界」というタイトルに表されていますが、そんな植物を愛する研究者たち、そしてその研究者たちを愛する「料理好き」の見習いと、物語は愛情に満ちています。

また、専門的なお話に加え、本村さんの研究への没頭の仕方など、自分自身の芸大時代を思い出すような描写もまた懐かしくなりました。畑違いの植物学ではありますが、音楽家のみなさんにも身に覚えがあるのでは?と思う研究対象への愛着。ぜひ手にとっていただければと思います。

明日の本屋大賞は、いったいどの作品に?

さて、「愛なき世界」は何位になるのか!?大賞はいったいどの作品か!?発表結果は明日また追記しますね!

発表を乞うご期待!