内田光子×モーツァルト
いつ、どこで、どんな時に聴いても、心揺さぶられる“名演”というものがあります。好きな曲や贔屓の奏者という意味ではなく、その瞬間、その場所で、その人にしかできなかった奇跡の演奏。
私が出会った「名演」のひとつに、内田光子さんのコンサートライブ録音があります。
内田光子: ライブ・イン・コンサート1991. 5. Japan
こちらのCDは、モーツァルト没後200年を記念して、1991年サントリーホールで行われたリサイタルのライブ録音で、
「モーツァルト・イヤーをかざるにふさわしい名演」
と大きな反響を得ました。もちろんプログラムは、オール・モーツァルト。
モーツァルトとは
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756ザルツブルク-1791ウィーン)は、ハイドン、ベートーヴェンとともに古典派を代表する作曲家です。
父・レオポルドはヴァイオリニストですが、今で言うステージパパで、ヴォルフガングを神童として売り込むため、各地の宮廷へ演奏旅行に行っていました。
非常に多作で、35年の生涯で600曲以上を作曲しています。また、逸話がとても多い人物でもあります。例えば、
- 幼い頃にマリー・アントワネットと会ったことがある
- 妻コンスタンツェは悪妻で、モーツァルトの死後、多くの楽譜を売り払った
- 死ぬ間際に作曲していたレクイエムは、依頼主が謎
- 実はそれは悪魔に依頼されたのだという噂が流れた
- 晩年は貧困して、共同墓地に埋められたために遺骨は行方不明
- 言動は小学生レベルで、目を疑うような手紙がたくさん残されている
- バカと天才は紙一重を地でいく人
…などなど。とはいえ、「フィガロの結婚」や「魔笛」、交響曲第40番、アイネクライネナハトムジーク、きらきら星変奏曲、トルコ行進曲など名曲をたくさん世に残していますし、そのどれを取っても品格があります。
モーツァルトの名手、内田光子
内田光子さんは1948年熱海市生まれ、御歳70歳の英国籍のピアニストです。幼い頃から海外で生活され、現在もロンドンを拠点に世界各地で活躍されています。
2011年、2017年と二度グラミー賞に輝いたことで話題になったピアニストですが、1970年のショパン国際ピアノコンクールでは日本人最高位である第二位に。英国エリザベス女王から「デイム」の称号を贈られています(デイムは「ナイト(Knight)」に相当する、女性が贈られる称号)。
ベートーヴェンやシューベルトを得意とするピアニストですが、個人的には「モーツァルトを聴くなら内田光子以外ありえない!」と思っており、小学生の頃からずっと愛聴しています。一時期、内田光子さんのモーツァルトのCDを収集しており、我が家にはピアノ・コンチェルトやピアノ・ソナタのCDが網羅しています(特に「戴冠式」が好き)。
メモリアルイヤーのライブ録音
モーツァルト没後200年というメモリアルイヤーに録音されたこちらのCD。数あるCDの中でもこの作品は、ライブ録音とあって息遣いまで間近に感じられるのがお気に入りです。拍手も収録されており、臨場感たっぷり(“拍手”というトラックが入っているのも面白い)。
変奏曲は「ああ、お母さん聞いて(いわゆる“きらきら星変奏曲”)」や「デュポール」という有名どころではなく、「グルック」というのが胸をくすぐります。
「真珠のよう」と称されるような繊細なタッチが必要なモーツァルトですが、どのシーンをとっても、そのタッチの緻密さが光ります。また、品のある表現、音色の美しさ、全てが完璧な状態で披露され、その集中力の高い演奏に、ぐっと惹き込まれていく作品です。
ちなみにプログラムはこちら。
CD1
- (拍手)
- 幻想曲 ハ短調 K. 475
- ピアノ・ソナタ 第14番 ハ短調 K. 457
- ロンド イ短調 K. 511
- ピアノ・ソナタ 第18番 へ長調 K. 533/494
- (拍手)
CD2
- (拍手)
- 幻想曲 ニ短調 K. 397
- 《メッカの巡礼》(グルック)の〈おろかな民が思うには〉による10の変奏曲ト長調 K. 455
- ピアノ・ソナタ 第15番 ハ長調 K. 545
- ピアノ・ソナタ 第17番 ニ長調 K. 576
- (拍手)
- アダージョ ロ短調 K. 540
- (拍手)
これだけモーツァルトが続けば飽きると思うのですが(映像がないぶん特に)、本当にどの曲もそれぞれのキャラクターを感じ、最後までぐんぐん引き込まれて、2枚のCDともノンストップで聞いていられます。
ぜひライブ感をお楽しみくださいね。
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